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ヤクザの恐喝と刑事の取り調べはどちらもそのような人情の機微に通じているという点で、よく似ています。これはだいたい二人一組で行われ、一方が「怖い人」、一方が「話の分かる人」の役を引き受けます。「怖い人」が「こら、なめたらあかんど」と脅かし、「話の分かる人」が割って入って、「ま、そんな怒鳴るもんやないで。兄ちゃん、こわがとるやないか」と助け船を出してくれます。そこでこちらは「話の分かる人」に「わらをもすがる」気持ちでとりなしを求めることになります。ところが、「話の分かる人」だったはずのその人が、こちらに十分すがりつかせておいたところで、突然凶悪な相貌に変じて、「こら、なに調子こいとるんや!」とどなりつけ出すのです。その瞬間に理性は「条理」に対する最後の頼りを失って、がたがたと崩れ去る。・・・・というのが「オトシ」の基本的な仕掛けです。
(内田樹『寝ながら学べる構造主義』)